贈り物のデパートです
「●●●からの贈り物
このたび株式会社●●●は、お客様にトイレ空間を
快適にご利用して頂けるように、便座殺菌クリーナー
「クリーンエンジェル」を採用致しました。
いやな雑菌も退治!
安心してご使用頂けます 」
贈り物というものは難しい。
いくら相手のことを想ってプレゼントしても、後々センスが問われてしまうなんてことはよくある話だ。
自分がもらったら嬉しいものを送りさえすれば、相手が喜ぶと思ったらそうでもない。
披露宴の引き出物として、新郎新婦二人の写真を印刷した食器セットなんてもらった日には、帰りのタクシーの窓から「二人の愛がアツアツで持って帰れないや!てへ!」なんて放り投げたくなる。もしくは、「おっと、急カーブの遠心力で勝手に飛んで行っちゃった!でも俺は過去を振り返らないタチだから仕方ない」とかなんとか。
そんな「タクシーの窓から謎の人物が印刷された皿が無残に舞い散る」事件が頻繁に起きないように、近年はカタログで引き出物が選べるようになったのだろう。
リサイクルショップに行く手間が省けるというものだ。
贈り物を送る際には出来たら相手には喜んでもらいたい。
「ちょうど欲しかったのよ、これ!」と言ってもらいたい。
相手の引きつった笑顔は見たくない。
喜んでもらえるかどうかをシュミレーションし過ぎるあまりに、円形脱毛症寸前になることもあるだろう。きっとある。
そんなときに日本では便利な言葉があるではないか。
遅刻した際に「道が込んでまして・・・」と付けるように、言い訳のような言い回し。
慎ましくて奥ゆかしい、すなわち謙虚であることが美であるとされるお国では、贈答品を差し出す際に、「つまらぬものですが」なんてセリフがオプションでつきがちである。
「期待しちゃだめよ」、「思ったほどのもんじゃないよ」、「生まれてきたことを後悔するよ」と、先にワンクッション的に断わりを入れておけば、例えどんなに上げ底仕掛けのお菓子でも相手にガッカリされることはない。
「クマ出没注意」と看板のあるところで、熊が出たようなものだ。
それくらい贈り物というものは慎ましく渡したい。なんなら、「その日、ちょっと熱があって・・・」くらい言いたい。
なのに上のトイレの貼り紙ときたら、やたら堂々。誰が待ち望んでいたのだ?
まるで、「長年ディズニーランドで働いていた●●さんが、当園こと、"ふるさと村"で働いてくれることになりました!これで近年は客足が遠のいていた当園も革新的に変われるのです!電飾パレードとかもやっちゃおうか?」的な、そんな優秀な人材を採用したかのように指すブツはこちら。
「 CLEAN GEL
レバーの下にペーパーを近づけ
1回押す 」
己でトイレットペーパーに液状のジェルを出して、便座をご自由に、思う存分に、心ゆくままにお拭き下さいというやつだ。
これはリアクションに困る。
「全米興行収入No.1!」なんて謳い文句の果てに公開された映画を見てみれば、「この映画の公開時期にライバルとなる映画が他になかったんじゃないの・・・?」という映画がたまにあるが、まさにそれ。
もしくは女の子が「すっごくかわいい娘なの!」と紹介してくれた娘が、「あ・・・あ・・・ああ」としか言いようがないような面構えだったりするのにも似てる。
悪気がないものだから、どこにも持って行きようのないやるせなさだけが残る。
「CLEAN GEL」もよかれと思い、わざわざ「贈り物」とまで書いて貼り紙にしたのだと思う。
「ミスユニバースに日本人が選ばれました!」と言われて見てみれば、日本人男性には全くウケそうにないフェイスなのと同じで、本当は喜ばしいことなんだけど「あ・・あ・・・ああ、いいんじゃない・・・」としか返しようがない。
せっかく頂いたプレゼント、でもリアクションに困る。
「欲しかったのよ!」と言いづらいどころか、想像にもなかった。
あれほど、前フリをしておくことが良いとされている国なのに。
学生さんですら、試験当日の朝には周りに「勉強してないわー、全然勉強してこなかったわー!」と言っておくというのに。
ここのコンビニと来たら、、、。
そう、ここは某コンビニエンスストア。
「お客様へ
このお手洗いは
お客様のご協力で
きれいに保たれています。
衛生管理と安全管理のため、
従業員も利用する場合がございます。
みなさまのご理解、
ご協力ありがとうございます。 」
先程の貼り紙もそうだが、何かしら先に言っておくということは大事かもしれない。
「ここの砂浜は、ここ30年間ほどゴミを捨てられたりしたことがないんですよ。ここを訪れる皆さんは心が綺麗な方ばかりなので、誰もゴミなどを捨てません。あなたもそうですよね、ドンチュー?」
とまで言われたら、とてもじゃないが普通のハートでは余計なことは出来そうもない。むしろ砂浜に足も踏み入れたくもなくなる。
右上には、ここのコンビニの制服を着た店員らしき人物が頭をぺこり。こういった謙虚な姿勢が一番最初の貼り紙に欲しかったところだが、全てはお客様のことを思ってのことだ。
「贈り物」だなんて、ちょっと表現が過剰だったかもしれないね。
過剰だったかもしれないね。
過剰だったかもしれないね。
過剰だったかもしれないね。
過剰なのだ!
「かもしれないね」ではなく、過剰なのだ!
個室内には、これでもかと高く積まれたトイレットペーパーの束が壁と化していた。
まだ開封したロールが予備として積まれているぐらいならわかるが、未開封の束がお代官様に年貢でも納めるかのように山盛りに積まれている。
けっして掃除道具入れの中などではなく、建物の構造上たった一つしかない個室内がトイレットペーパー祭りと化していた。むしろ繁殖の過程のようにも見える。
用を足している間に横揺れの地震でもきた日には、米俵よろしく次々と落ちてくるトイレットペーパーの束と束。
バレーのレシーブの練習をするにはもってこいかもしれない。
買占めにより店頭からトイレットペーパーが消えたところもある中、この過剰供給。
あり余るお尻!
巨人でもここのコンビニには来るのか!?
そんな過剰サービスはこれだけではない。
よく見てもらいたい。
!!
トイレットペーパーとトイレットペーパーの隙間にエロス臭漂うコミックが2冊。
神も創造しなかったであろう、この空間の有効活用法。
しいて言うならば、ぱふぱふの原理。
過剰サービス且、過激サービス!
↓こちらのようです。
ワケあり (ヤングコミックコミックス)
ラブフール (アクションコミックス)
トイレットペーパー同士の隙間を棚代わりに使うだなんて、とてもお客が考え付くとは思えない。どこかしら常習性も匂うことから、きっと店員によるものだろう。
さては、先程の貼り紙にあった。
「従業員も利用する場合がございます。」
というのは、これのことか!
この隙間を棚が割代わりにしておいて、トイレを利用する度に続きを読んでいるに違いない。
・・・・・・商品ではないことを願うぞ。
それとも過剰なサービスの一環なのだろうか?
ご自由にお読みくださいと?
そんなサービスはまだ終わらない。
もっと目線を高くしてみよう。
燦然と輝くリポビタンD!(開封済みのようだ)。
個室が店員の私物化されている感もするが、借りる身の方のお客がどうこう言えたものではない。
楽しませてくれるという点ではサービス過剰気味だ。
簡単に言うと、「ゆるい」。
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「厠イヤミ百景の一景」
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