鼻水と蛇口と節水と
「鼻みずと
蛇口は
しっかり
止めましょう。
節水にご協力ください。」
貼り紙というものは適したところに適した一句があって本領を発揮されるもの。
富士の樹海の入り口に、「3Dメガネは観賞代とは別途300円頂きます」と書かれていても首をかしげるだけだ。
薬局のトイレの洗面台の鏡に貼られていた上の一枚。
薬を取り扱っている店ならではのものが貼られていたのだが、写っているキャラクターを見れば、どうやらコン●ックのキャラクターのようだ。声を出されているのは笑福亭笑瓶氏。
風邪による鼻炎と蛇口を掛けたこの一品。他ではなかなかお見かけすることは出来ない。
これを作ろうと思案し、トイレをPR展開の場所に選んだ製薬会社のセンスが光る。営業さんがトイレに貼らせて下さいと薬局の人に頼んだ絵も浮かぶ。
水の節水も訴えているのならば、トイレに貼られなくてどこに貼られたらいいのだろう。
それは、やはりトイレしかない。
狙ったなぁ。
上のような手法の広告だと、これからの季節には花粉症予防の薬にも使えるかもしれない。
トイレ内のPR展開は各社もお盛んなようで、そんなに広くないトイレの中は中学生の部屋のようにポスターでいっぱいになっていた。人の目に入ればところ構わず、それが広告だ。
同じく洗面台周りには、
「ウィルス対策は手の清潔から! 」
あまりに店や商品の宣伝になるところには、こちらでモザイク処理をさせて頂いた。
隙間がないと言うか、忙しいと言うか、狙いを外さない。
ここで消費者の脳裏に叩き込めると思ったところは、逃がさぬようにスマッシュが打ちおろされる。
物事を記憶するには関連付けという手法が効果あるが、これも一つの関連付けなのだろう。
高コレステロールのものを食べるときに黒烏龍茶を飲みたがるオジさんと同じである。
ちなみに本製品も置かれております。
デパートの地下食料品売り場での「ご試食いかがですか~」的な感じだ。
ちなみに持って帰られないように店名がマジックで記入されていた。これを持って帰るのは、試食コーナーでおかわりを要求するよりカッコ悪いぞ。
トイレ内はほとんどが「頻尿・頻尿・頻尿・おしっこ近いんでしょ?」といった宣伝ポスターで埋められていたので、そこら辺は割愛させて頂こうと思う。過去の記事で取り上げたポスターとも重なってしまうので。
一枚だけ取り挙げるならば、こういったものだ。
「夜何度も起きる
おしっこで
お悩みの方に。 」
大きなお世話だと言いたいところだが、おしっこをするところではおっしこの悩み解決の広告。正に適材適所。
ここのトイレを利用する方の100人に1人は、もしくは10人中に一人は「はっ!俺のことか!」と、このポスターの一句が心にクリティカルヒットするかもしれないのだ。
罠を張っておくと言うと言葉は悪いかもしれないが、そういうことだ。
誰かさんは誰にも言えずにおしっこの悩みを抱えているかもしれない。そこへ待ってましたと「そのおしっこの回数減らしまっせ!ゆっくり寝えや!」と、このポスターが待ち受ける。
広告を貼る場所としては割とターゲットが絞りやすくていいところかもしれない。
先程から尿が漏れそうな幼児の如し、「おしっこ、おしっこ」と連呼しているが、肝心要のそのおしっこをする小便器にも貼り紙が貼られている。
しかし、そこに貼られているものは一番おしっこについて訴える場所であるにもかかわらず、おしっことはちょっと違うものであった。
「年齢を重ねることで起こる
様々な症状に 」
お年寄りにも優しいように小便器には手すりがついている。決して安全バーではない。しかも降り切らないまま発進してしまうコースターでもない。
その安全バー越しでの一枚だが、ここで改めておっしこトラブルについて叩き込んで来るかと思いきや、あえて外してきたそれは滋養強壮剤。
「● 小さな文字が読みづらくなった
● 足腰に痛みを感じ始めた
● 最近、疲れが取れない
● だんだん、元気がなくなってきた 」
「小さな文字が読みづらくなった」と言うか、挑戦的に実際に文字が小さい。
これではお年寄りが最近文字が読みづらくなったと誤解してしまうではないか。
はたしてそれが誤解かどうかは断言出来ないけども。
さらには男性にとって放尿とは立ち仕事。
その立ち仕事をしている最中に己に問いかけろとばかりに、「足腰に痛みを感じ始めた」「最近、疲れが取れない」の文章。
スイーツバイキングのお店に「その歯の痛み・・・虫歯があるかもね!」と書かれた貼り紙があっては、スイーツ女子も迂闊にタルトタタンやパリブレストに手が出せないではないか。
とどめの一発に「だんだん、元気がなくなってきた」。
夏に捕まえたカブトムシの話か?
ただ用を足しに来た客を不安の渦に引きずり込まんとする煽り文句の数々。確かに広告というのは人の不安がっているところを突くことが効果につながる。
和食専門でテーブル席など皆無、全て畳敷き、「さあ、男も女も靴を脱いで上がって上がって」といった店内の柱に、「足の匂い、このスプレーで1秒で解決!不快な足の匂いがすぐさまアルプス山脈の匂いに!その名もアシサキスパン!店内でこっそり発売中!」なんて広告が貼ってあれば需要が生まれる。
アルプス山脈の匂いとは一体?といった点は置いておいて。
誰だって年を取って行けば、元気の入れ物ゲージは小さくなっていく。そこは精神面で補って行きたいところだが、心配し過ぎはこれはこれで逆に元気が減って行ってしまうもの。
「俺の尿のいきおいに便器が耐えれるか便器が心配だよう」ぐらい言いたいものである。
ちなみにここで、ただ単に不安を煽りたい場合には「後ろに立っている男性は誰ですか?」などが効果的である。薬を購入しようという意識は生まれないが。
最後に、
「万引き
ダメ!!
しない、させない、見逃さない。 」
NAINA16状態だ。
これに尽きますね。
--------------------------------------------
「厠イヤミ百景の一景」
・本当にあった怖い尻 (更新予定)
・女子マネージャー列伝 (更新予定)
・歩こうの会 おざな (更新予定)