ドロボウに注意!
こちらです。 」
便器横の壁に掲げられているのは、四色に分けられたボタン群。
左側から順に読めば、「止・おしり・乾燥・流す」と、この文字の響きだけでトイレのことだなと分かる。
この中では、特に「おしり」のセリフが一番トイレらしさを表しているところだろう。仮に「お尻」の部分が、「おそうめん」に変わっただけで世界がガラッと変わる。
世の中で「おしり」という名のボタンはトイレだけだ。
見る限りどうやら「ビデ」のボタンはないようなので、神戸があるのは神戸県(実際は兵庫県)と大まかに言ってしまうかの如く、だいたいのデリケートゾーン一帯は「おしり」でひとくくり。
尚、便秘気味の方はここに「出す」のボタンが欲しいことだろう。
己の体とこのボタンとを連動させる必要に駆られるが、多分HDMIケーブルとかでなんとかなるだろう。
ところで貼り紙にあるようにトイレの水を流すのに、ボタン一発でことが済むようになっている。
流そうと思ったら、水が大事なところを弾丸シュートしてたり、熱風がおしりに吹きかかったりしないように、「流す」のボタンだけ四角形と区別化されている。
<当ててるだけです>
わざわざ貼り紙で知らせているだけではなく、そのボタンの一個一個の大きさもなかなかの存在感を放っている。
「ごはんですよ」のフタほどではないが、ペットボトルのキャップよりは大きい。
最近かすみ目が激しいお年寄りから、九九の段を十の段しか言えない子供まで明らかに気付くサイズなのだが、気付かれないから貼り紙があるのだろう。
まあ普通はそこら辺に並んでいるスイッチはお尻周りを洗浄するためのものが大半で、ボタン一発で水まで流してくれるとは思わないかもしれない。便利な世の中だ。
そして目線を真正面の壁へと向けると別の貼り紙が目に入る。
「ドロボウ
に注意!
あなたの荷物が
ねらわれている!
カバン は目の届く
ところに置きましょう
■ ■ 警 察 署 」
21世紀の英知を堪能しようかと思えば、真正面にあるのはやんごとなき貼り紙。
道沿いに花が咲き乱れるプロムナードと書いて散歩道かと思えば、急に「痴漢に注意!連続婦女子おさわり事件多発中の多発!featuring露出狂!」と、ぶち壊しの立て看板が出てきたような感じだ。
素敵な花の花壇も、ただの犯罪者の隠れ場所としか見えなくなってくる。
まあそれは道沿いならではの話だが。
ここはトイレットである。
しかも個室。
個室にドロボウ?
例えば、個室のドアの内側にあるフック。荷物をかけるあの棒だ。
さて用を足そうと、手荷物をフックにかけて、下の衣類を脱いで下半身をロックオンをして、緩められるだけの気と下半身を緩めていると、あなたの知らない間にドアの上から手を伸ばしてフックにかかった荷物に伸びる一つの手・・・。
これが結構ある話だから怖いところだ。
まだ洋式便器なら、気付いた途端にフックまで「何しとっとー!!」と手を伸ばせる。
しかしこれが和式便器ならどうしよう。あなたはタイガー戦車のように重心を下半身に置いている。「どっしり」という擬音が似合うくらいに、しこふんじゃっているわけだ。これはあまりに無防備であり、生まれたての小鹿にすら負けるかもしれない。そんなときに外からフックに伸びる手を発見したら立てるだろうか?
いや、開いたお尻が再度閉じようとも、もしくは何か茶色い子供のようなものが出掛かっている途中だろうが、立たなければならない。
じゃないと、後で警察に事情聴取を受ける際に、「気付いていたのに防げなかったんですか?」「いや・・・、ちょうど三日ぶりのが出ている途中で・・・」と、荷物も取られた上に、恥ずかし目まで味わう羽目になってしまう(別に素直に言わなくてもいいんですけどね)。
こちらがトイレの個室で最高にリラックス、もとい赤ん坊の頃に母親にも見せなかった屈託のない笑顔で排出作業に勤しんでいるときに、そんな卑劣な犯行をする奴なんてけちょんけちょんにしたいところだが、必要とされるのは常に自己防衛。
ではそのフック泥棒のことを指しているのかと言えばこれがまた違う。
ここの個室は広い。
トイレ自体の入口のドアを開けると男女関係無く、これまた大・小便器関係なく、六畳一間くらいのサイズの空間に便器様が一つ鎮座という形である。
「玄関開けた二分でご飯」なんてコピーのCMがあったが、「玄関開けたらすぐトイレ」といった感じである。
決して先ほどのフック泥棒を心配するようなレベルではなく、便器一つにこれだけ空間があっていいんですか?と不安になるほど無駄に何もない床は広く、便器に座ればドアまで到底手が届く距離ではない。もちろんフックもない。
しかも全面黒大理石張り(多分パターンシール)である。
他のフロアにトイレがあるわけでもなく、あなたがここのトイレを一つ占領すればトイレ全てを占領ということとなる。
ちょっと貧乏性の人にとっては心細い広さであり、気持ちがタフな方にとっては、一家の主こと、便器の主になった気分になれることだろう。
ここに関しては泥棒の心配は全くと言っていいほど関係ない話だ。
しかしここの利用者が借りているのはトイレだけではない、もう一つ借りているものがある。
個室だ。
トイレの方ではない。
だってここはネカフェことネットカフェだからだ。
あなた本体はここでオキラクゴクラクと用を足している間に、あなたの荷物なんかはボックスシートかオープンシートかはお財布事情に任せますが、そちらの方に置きっぱなしだったりするわけだ。
ここで言う「ドロボウに注意!」は、どうやらそちらを指していたのである。
「今気分良さそうな顔してるけど、シートの方で誰かがカバン開けてるかもしれないぞー。財布は今持ってるの?免許書なんか盗まれた日には、"ご利用は無計画に!"ってお金借りられちゃうぞー。君の名前と住所を語ったパスポートで、明らかに日本人じゃないフェイスのアジア圏の方が入国だってしてくるかもよー!」と脅して・・・、いや注意を諭していてくれるのだ。
まるで東京に上京して生活していたら、デパートなんかで故郷の物産展を見付けてしまったような感じである。
ふと思う、我が故郷、小学校の同級生達はどうしてるかな?なんて、ちょっとセンチメンタルな気分にもなるが、上京も何も来ているのはトイレである。
もっと言えば、「お婆ちゃんが倒れた!」と実家から電話が掛かってきたような感じだな。
ああ、今すぐにも大好きなお婆ちゃんの元に帰りたいけど、こちらでの仕事も生活もある。帰りたいけどすぐ帰れない。しかし現実は便の用・・・・・・。
トイレがここの便器一つだけあって、なかなかゆっくりした気分にさせてくれない貼り紙である。
もっと簡単に言えば、「はよ戻れ」ということだろう。
そして貼り紙の文中で「カバン」のところだけ四角の線で囲っているのはなぜだろう。
強調したかったのか、もしくは国語テストの文中の穴埋め問題にも似ている。
もしかしたら「カバン」ではなく、別の単語を入れても通じるのではないだろうか?
・財布
・定期
・携帯電話
・帽子
・コート
・おやつ
・子供
・恋人
・おじいちゃん
・ペット
・カツラ
たいがい身の回りのものを入れておけば、赤ペン先生も丸をくれるはずだ。
ただし、最後の「カツラ」に関しては、あれは己の頭にドッキングさせて効力を発揮するものであり、外で自分の目の届くところにあった時点で、既に周りに何かがバレてしまっていることになる。
これには赤ペン先生も首をかしげるかもしれない。
そして水洗タンクの方なんだが、
「タンク式ですので流れない時はしばらくしてから再度流してください」
いや、見てもらいたいのはこちらではなく、もっとタンクの縁側である。
「手動水洗レバー→」
そんなにボタンにもこだわっていなかったようである。
お好きな方をどうぞ。
そして早く己の席に戻るべきだ。
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「厠イヤミ百景の一景」
http://www.leolio.com/index/KAWAYA/KAWAYA_menu.html
ガタイのいい兄貴。
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上戸彩さんと結婚したいのですが・・・。
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