Let it be はとバス
人間何かとあらゆる選択を迫られるときがある。
仕事なり恋愛なり、その後の未来を左右する岐路に立たされるというときが誰にでもある。
そこまで大げさじゃなくても、今日の3時のおやつは甘めでいくか、しょっぱめでいくかなどと、ちょっとした程度の選択は日常の中にいくつでもある。中にはそんなあなたのために「塩チョコ」など一件落着な商品もあるが、人生とは、はっきりカタをつけなければならない連続である。
そんな日常で、誰かに導いてもらえたらどんなに楽だろう。
「こっちですよ。ついてきて下さい。」
そう導いてもらえたら。
例えば人間ドックの検査など、検査を受ける皆さんは同じ恰好をして、普段の社会的地位なんて分け隔てなく、看護婦さんに促されるまま「のたり、くたり」と身を任せるのみ。いつもだと人を動かしている人も、日常的にこき使われている人も、「のたり、くたり」と頭のスイッチをニュートラルに入れて、よい子ちゃん的にオキラクゴクラクと、風に舞う木の葉の如く言われることを聞くだけ。
どこそこを開けと言われれば開き、これを飲めと言われれば飲む、結果は人それぞれだが過程は誰もそんな感じだ。正にLet it beという姿勢になったときに、人は何かしら背中に背負っている荷物がちょっぷり軽くなる。別に「素顔のままで」という意味とはまた違うが。
そんなリーダー的スタンスから我々を導いてくれる職業がある。しかも全然偉そうじゃない。
それは、バスガイドさんだ。
移動もバス任せなら、降りてからもガイド任せ。
こちらは何も考える必要はない。
こちらを見ろと言われれば見て、こっちに来いと言われれば行って、これを食べろと言われれば食べる、ついでに集合写真を撮るから笑えと言われれば笑うだけ。
ただ、集合時間さえ守れば後は何も心配はいらない。
気を配るのはおみやげと天候ぐらいのものだ。
もしくは、バス内で食べるせんべいのチョイスにこだわるぐらいだ。
人間ドックと違って、その結果「このレントゲンを見て下さい。胃の隅に黒い影が・・・」なんてことを言われる心配もない。
そんな観光バス。
「このトイレは、はとバス
ご利用のお客さま用です。
お客さま以外の方の使用
は、お断りします。
はとバス●●営業所 所長 」
トイレに使用に関しては、ちょっと厳しいです。
ここは、はとバスの利用者の待合所に隣接したトイレである。
都内のあちらこちらへと向けて発進するバスが集合するだけあって、やはりそのスタート地点は東京の中心的ハブ駅の前にある。そしてここのトイレは、普通の道すがらにガード下に入るように建てられているために、その前を通る人がむやみやったらに入りがちである。東京の中心的場所だけあって、その通行数ったらアンカウント。
そりゃあ全然関係ない多くの人に使われては清掃すら追いつかないというものだ。トイレの入口にこれくらいのことは書くだろう。観光名所の案内は丁寧でも、トイレに関してはちょっときつめの一言が添えられている。
とりあえず、「前方のこちらをご覧下さい」ということだ。
入れるのは、これからバスに乗って身を任せる人のみ。
出すもの出して、後は「のたり、くらり」する人のみ。
まあこれも選択が必要ないと言われればそうだ。
ここでは選ばれた人しかトイレが出来ないのだ。
絶対的拒否の前に選択枠はない。
さて、そんなトイレの入口の横に日本人なら見慣れたキャラクターの姿を見付ける。
「2階建てハ●ーキティバス
りにゅ~ある
デビュー!!
新しくなった
ハ●ーキティバスで
東京を気軽にドライブ 」
ある程度、著作権に触れそうなところはこちらで処理をさせてもらった。犯罪者のような目隠しはポスターの方にはない。
まあ、コラボという奴だろう。
確かに最近、新たな宣伝スペース発見!ということでバスのボディに、いったいどこのバスなんだ?といった感じのプリントがされた車体を見掛けるが、これは中の中までお猫様で埋められている模様。
なんならお土産まである。
詳しくはこちらまで、
http://search.hatobus.co.jp/main/kitty.html
かわいいものは見た者の目の端を下げ、口角を上げる効果がある。
殺伐とした世の中、こんなバスが走っていてもいいじゃないか。こういったバスが走っているだけに、灰色のロードに一輪の花が咲いたかのようだ。例え運転手が脂が乗り切った中年男性だろうとも。
さらにはその内装から、乗客のおのぼりさん的ギアに入った頭に、尚のこと日頃の殺伐とした戦いを忘れさせる効果があるに違いない。なんなら幼稚返りする人もいるかもしれない。しかし、例え頭の中のコードを何本か引き抜いたところで、ちゃんとリードしてくれるバスガイドさんがいるから安心だ。
むしろそうなってくれた方が引率する方も楽かもしれない。
にゃんにゃんのバスで、気分もにゃんにゃんになってもらいたいところだ。
さて、今回私ははとバスに乗る予定がなかった。
つまりは上の貼り紙に書かれているとおり、トイレの内部まで入っていない。
じゃあもう撮るものはないなと、トイレを離れ、歩きながら駅前に停まっているバスを次々と目で流していると、件のキティバスがあった。
そしてそのシートに見えるお姿は・・・
間違いない。
キティ様が就寝中であった。
きっと乗客を乗せた際には、どこにあるか分からない口でテキパキとナビをしてくれるに違いない。
猫の集会所とか連れて行かれたらどうしよう。
ああ、誰かにこの身を任せたい。
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「厠イヤミ百景の一景」
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最近の更新(適当に
・女子マネージャー列伝 (更新予定)
・天が呼ぶ 地が呼ぶ お客様が呼ぶ!消費者言いがかり連絡会 (更新済み)
・猫烏丸OP
(第13回大人のためのおもちゃ販売のバイト)
都内、某駅付近にて