ご婦人立入り禁止
「ここは紳士化粧室です
ご婦人の方はご遠慮
ください
婦人化粧室は売場を通って
反対側にございます 」
見てお分かりの通り、ここは紳士化粧室。
私が男である限り、もしくは何かしらの理由で途中で性が変わらない限りはこちら側を利用するのが当然である。
どの場所どの施設に限らず、普段どちらが男性トイレか女性トイレかは、トイレ入り口付近にあるマークを認識することで、その人の行く道は決定付けされる。たまにその真ん中に多目的トイレもあったりするが、基本的には青か赤かのどちらかだ。
誰もがトイレ入り口付近でコンマ何秒かは視線を上にするはずなのだ。
だがその中でも、たまにはそのマークすら目に入らずに、とりあえず存在するからには「トイレ」だと。
「水が流れるのならどちらでも構わない」と言ったか言わなかったか、用を足したいという欲求に頭の中の9割方が占められて、そのこと意外に考えが及ばなくってしまっている人もいる。
背中にでもパトランプでもあった日には、けたたましいサイレンと共に赤々と光っている状態、つまりは緊急。
下半身が御用!御用!といった切羽詰った人の場合、マークが赤だろうが青だろうが、「それはそれ、これはこれ。でもそれどころじゃないの!」ということで踏み込んでしまう人もいるだろう。
ここで「1+1+1は?」と訪ねたところで、返ってくる言葉は「うるさい!」か、「川」だろう。
そんなときに、ちょっとお待ちなさいと。
確かに下半身は緊急かもしれないけど、ここに入ってしまった時点でジェンダーを捨てることになるよ、お前さんと、ここで最初で最後の警告が貼られているのである。
まあただ単に間違えて入ってくる人もザラにいると思われる。
むしろ大抵は注意不足から来るそれだ。
そんな方にも「性の境界線を踏み間違えそうになってますよ!」と注意書き。
時々傍から見て、その外見から察しようにも、男だか女だか不確かな人も中にはいるが、そんな人も自分の性に関してはお間違いがないはず。
<ときどき、どっちだか不明の人がいる>
普段立って用を足しているか、座ってしているかをお忘れになるようでは、一度大きな病院で体の隅々までメンテナンスしてもらった方がいい。
さて、ではここで用が足せると思っていたのに、実は男性トイレと気付いたご婦人方々はどうすればいいのだろうか?
補足しておかねばならないが、ここは建物の事情からか、男性トイレの横に並列して女性トイレはない。
男女のトイレは並んであるものと思っていたご婦人は、ここで自分が向かうべきトイレを見失ってしまうのだ。
トコトコと寄って来る豆柴(犬)にも手を差し伸べたいところだが、お困りになっている女性ほど手を差し伸べたいものはない。
そんなときに、何がある?
地図がある。
「→婦人お手洗は20メートル先→」
そうなのである。
ここから20メートルほど向こうに行ってもらいたい。
行く道は売場の前を通っても、階段を一度上がってもう一度下がってもらっても構わないところだが、ここがデパートである時点で、お店側としては傾斜しかない階段よりは出来たら売場の方を通ってもらいたいのだ。
一番上の貼り紙に、
「婦人化粧室は売場を通って
反対側にございます。 」
と書かれている通り、出来たらでいいんで商品を眺めてもらいたい。そして用が済んだら、もう一回売場をブラついてもらいたい。
階段側からも行けるんだがな。
もしかしたら階段側からだと、20メートルもないかもしれないのはシークレットだ。
矢印を指せば、大抵の人はその通りに動いてくれるものなのだ。
そしてそれさえも、もどかしい人は階段側から、
「混雑の際は、
三階・四階のトイレを
ご利用下さいませ。 」
よくデパートのトイレは婦人服売場のフロアには女性トイレのみなどと、階によって男女のトイレの数の比率が違っていたりする。そしてその数は、女性は自然と様々な小さな用が多いためと、一回の利用に時間がかかり混雑を生むことから、女性トイレの数の方が比較的多い傾向にある。
しかしここのデパートは各階の男女のトイレの数に隔てがないように配置されているのだ。
どこの階に行っても20メートルほど離れてはいるが(売場経由)、お互いに平等にトイレがある。
ないのは一階だけである。
とりあえず人を上に上げなければな、始まる商売も始まらないという話だ。
一時期、経営不振の小さなデパートの最上階に大型100円ショップが誘致されていたのも似たような理由だ。縦に大きい店ではまず客を上の階に連れて行かねばならない。
物産展などがある催事場の階も大抵は高層の階に設定されている。それからゆっくり下の階へと客に降りてもらいつつ、買い物を楽しんでもらうのだ。
さて、当然ながら上の貼り紙・プレートたち全てはトイレの入り口付近に貼られていたものだ。
個室の中に婦人トイレまでの地図があったところで、どうしろと深く頭を横に垂れるしかない。
下のゾーンでは別のものが垂れているであろう。
ではだ、これをデパート側の希望通り、売場の前を経由して20メートルほど進んだ先にある婦人トイレの方には、先ほどとは反対に、
「←紳士お手洗は20メートル先←」
といった地図もとい、
「ここは婦人化粧室です
紳士の方はご遠慮
ください
紳士化粧室は売場を通って
反対側にございます 」
と書かれた貼り紙が存在するのであろうか?
・・・正解は存在した。ただし地図の方しか確認出来なかった。
「ここは・・」の方は、男性トイレの方は入り口入って、ちょっと曲がったところの壁にあるために入り口真正面からでは見え辛いようになっている。
言ってしまえば、一度相手方陣地に片足を踏み込んでしまった者に対しての忠告である。
まだ引き返せると。
それもあってか、当然女性トイレの方を私が覗き込むことも、もちろん片足突っ込むわけにもいかない。
そして女性側トイレ付近で写真を撮らないのが私のモットーなので(よほどの女性トイレマークならば撮る!)写真には収めてない。危うきには近寄らずだ。
女性トイレに間違えて入った時点で、既に紳士落第なのは確かだ。
では男性トイレに戻って、中の方はどうなっているかと言えば、
「 お客さまへ
●●●●●は、ゴミ減量の
ため、ペーパータオルを中止
致しましたので、何卒ご理解
の上、ご協力くださいませ。 」
ペーパータオルを補充するのにも経費がかかる。
商業ゴミを出すのにも経費がかかる。
デパートも今いろいろと苦しいのだ。
紳士ならハンカチの一つも常時持っておきたい。
時々、大混雑のアミューズメント施設なんかだと、当然ながら女性トイレには長蛇の列の大安売りとばかりに、もの凄い数のトイレ待ちの列が出来ていたりする。
そんなときにジェンダーの壁を越えて、、、多分、そのときだけね、おばさんはおっさんへと帰化出来るのだろう。そこには「女勇者現る!!」とばかりに、男性トイレに入ってくるおばさんの存在がある。
大抵困った顔をするのは男性側だ。
これが逆だったら、個室は個室でも、後に別の個室にて取調べが始まることとなる。
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都内、某デパート内にて