100円ショップ吉川晃司
誰にだって、ないと困るという店がある。
それは普段の生活に必要不可欠な存在。なんと言っても扱っている物の種類が大変豊富であり、価格もお手軽設定でなんなら店内全商品お値段据え置きと来たもんだ。
そんな店があるか?しっかりきっかりあるのだ。最近だとその存在自体の新鮮味は薄れつつあるが、やはり「これがこの価格!?」といった驚きの品は今でも新しく見付けることが出来る。
そんな店とは、
「お客様各位
大変、おそれいりますが、ご使用後
必ず、水を流すように
ご協力下さいますよう
よろしくお願い致します。」
ここの100円ショップチェーンのロゴが入っているボードには、大変おそれいらなくてもそこんとこは常識と来たもんだ的内容のものが書かれていた。
そう、ここは100円ショップ。正確には消費税も後乗せサクサクとかかってくるが、小銭であれやこれや購入することが出来る点には変わりない。
黄沙の如く日本中に広がった100円均一の店のチェーン店の数々。
そんな中でここの100円ショップはどことは言わないが、何かにつけて売り場のコーナーの名称の頭に「THE」をつけて分類していることで有名だ。冠詞の意味などなくても「THE」をつけるとどこかカッコいい響きがする。一瞬バンド名と聞き間違えそうになるほどだ。
「THE トイレット」とかね。
きっと五人組のおしゃれ系ポップスバンドだ。
18番のオリジナル曲のタイトルは「小の連打で大を補うLOVE2000」。
話を戻すが、小水用便器の上に飾られたボードは、低姿勢の文面にて水を流してくれるように懇願しておられる。
次々と小便器の中に己たちの尿を溜めたところで、いつ便器の淵から表面張力の限界を超えてこぼれ出すかの、小便チキンレースをするのならば、各ご家庭で家族一丸となってチャレンジしてもらいたいところだ。
女性には分からぬと思うが、公衆トイレの小便器の中には人が前に立ったことを便器淵のセンサーが感知して、人が離れた後に自動的に排水をする便器が設置されているところがある。実に多々ある。
それに慣れてしまった方々はいつもの調子で用が終われば離れてしまうか、中にはみんなが代わる代わるナニをいろったと思われるゴールドハンドにて押した水洗スイッチを、間接的に指キッスするのに抵抗がある方もいるかもしれない。
もしくはただダルがっているかだ。
そのボードにはイラストまで書かれており、水を流すとは一体どうするべきか、洗面台から使用後の小便器まで両手に水を汲んで何往復しなくてもいい便利な方法もせっかく描かれているのにも関わらず、
「押す!」
よく見れば青い色のイラストの上に、品もセンスもない落書きが上描きされている始末。
まあ、そこんとこはもうスルーしよう。
イラストを読み取ったところ、親指が下ということは、もの凄く長く強靭な小指にてボタンを押しているように見えてしまっているがそこのところもスルーだ。比較的手が小さい私の小指は、消しゴムのMONOなんかのケースをかぶせてしまえば隠れてしまう。
そして個室の方のドアに目をやれば、
「お客様へお願い
強い力で戸を開閉しますと
戸が開かなくなる可能性が
ございます。 」
思いっきり強い力をかけるとドアの破壊へと繋がり、話は開閉の次元ではすまなくなるが、中途半端に強い力でドアと攻防するとどうやら閉じ込められるといった状況に陥る仕掛けとなっているようだ。ちょっとした怪奇現象かもしれない。
簡単に言えば「建てつけ悪い」だけなんだが、珍しいのはこの貼り紙というか、土台の紙には発砲スチロールボードを切ったものが使われている。その丸みを帯びた角といい、微妙に斜めのラインを描いている切り口といい、実にお手製感がたっぷり全面に隠されることなく表れている。
バレンタインの手作りチョコレートのようにトイレを守ろうとする愛情に溢れ返ったものと捕らえよう。まるで「ただのメモみたいだ」なんてことは言いっこなしだ。発砲スチロールのボードを使っているだけに普通しにない微妙な厚みも存在する。
にしても家で作ったドーナッツは綺麗な円を描けない。
この発砲スチロールのボードは、お手軽に切ったり貼ったりと加工が容易なのか後になっても出てくるのでお忘れなく。
そんな個室のドアを強くもなく弱くもない微妙な力加減でくぐってみれば、
「大変申し訳ございません。
店内全て
禁煙
となっております。 」
「あなたもいっしょに
●●●●で働きませんか?
スタッフ募集! 」
トイレ内でタバコを一服される方もいるので、釘を刺すべく店内での禁煙を何気なくチラつかせている。
普段それだけならば、黄色地の紙に赤文字といった十分目立つものだが、それよりも下にかなり目立つバイト募集のポスターが一緒に貼られているためにすっかり影が薄くなってしまっている。
風をひいて40度くらい熱があるのに、ちょっと指先を切った人の方が血も出てるし分かりやすくて同情を買うようなものだ。
・・・なんか変な例えで申し訳ない。
個室にて用を足そうとどっしり構えたところにて、バイト仲間勧誘のポスターが目の前にでかでかとお出迎え。
閉鎖された個室内は落ち着いた時間が流れているために、こういうときこそ時給を含め雇用体勢の内容の細かいところまで読んでしまう人もいることだろう。
店内にも同じようなポスターが貼られていたが、じっくりしげしげと眺めさせるにはこういった場所の方がもってこいかもしれない。
にしても、このポスターの上部、、、
口から上が切られた店員の顔がちょっと怖い。
店員の何気ないイメージとして、個人を特定しない方針のデザインにしたかったのかは定かではないが、口から上をわざわざ切るデザインにしなくても良かったのではないか?笑顔なだけに余計に怖さが引き立つ。
ちなみにポスターの真ん中辺りにこれまた手作り感たんまりの袋が接着されており、そこにここへの連絡先などが書かれた小さ目の用紙が入っていたようだ。しかし私がこのトイレの個室に訪れた時点では全部なくなっていた。
きっとトイレで用を足しながら、労働意欲に駆られた方々が便と共にたんまり出たのだろう。
バイトの数が予定雇用数に達したときにこのポスターはこのトイレから消える運命とある。
そしてトイレ内の貼り紙を一通り見て周り、ここのトイレから一旦出てから入り口のドアを振り返ると、
「このトイレは
男性用
他にも
3Fが男性用
1Fが男女兼用
となっております」
「女性用は2・4Fです」
先ほどの発砲スチロールのボードがオリジナリティ溢れる形で「すっきりしましたか?」とご機嫌な挨拶。
ここの100円ショップは傾きかけた小さなデパートの最上階にあるようなテナント型ではなく、ビルの5階から地下1階まで全てが、ビルの中隅々までもが100円ショップで成り立っている。よく駅前などにある100円ショップと比べるとかなり大型店舗だろう。
100円玉が何枚あっても足りたもんじゃない。
1階に関しては男女兼用となっているが、他のトイレに関しては各階に男性トイレオンリーか、女性トイレオンリーとなっている。一つのフロアに男か女のどちらか一つのトイレ、そして先ほどまでレポートしたトイレは5階の男性トイレである。
男女兼用、女性用トイレは私の仕事の範疇外なので無視しておいた。そして3階の方のトイレは特に取り上げるものもなかったのだが、5階のトイレの内部・入り口に関してはこのように男性型に切り抜かれた発砲スチロールボードが貼られていた。
最上階にて何かしら吹っ切れたものがあったのか?
「なんとなくこんな感じ」こと、フィーリングで切られたと思われるそれは、よく公衆トイレの入り口にある男性のトイレを示すシンボルマークを模ったものと思われる。
ちょっと幅広の肩にキュッとくびれたウエストをお持ちで、鍛え上げられた体は水球でもしていたかと思えるほどの逆三角形体系。ここまで男性アピールをされていては、「男性用」の文字がなくても、とてもじゃないが女性が間違って入ってしまうようなことはないだろう。
まるで、
その体系は、
その男性としてのセックスアピールは、
あれだ、
モニカだ、
吉川晃司だ。
ちょっと横に顔をそむけた風に切られたシルエットもシャイなあんちくしょうによく似ている。
彼の歌い方風に書かせてもらえば、
「ぅくぉのチョイレうわぁ
んどぅわんすぇいようぉうおぅおう~」
となっているところだろう。
このボードをこの形のまま100円で売ればいいのに。
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「厠イヤミ百景の一景」
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都内、某テナントビル内にて