あぶない。ちがでるよ。
「お客さまへ
当店のおトイレは禁煙です。
おタバコはご遠慮ください。
おトイレは店従業員も使用
いたします。ご了承ください。」
「お客様は神様です」というフレーズがあるが、どうやらお客様は「虹」でもあったようだ。
ビビットなレインボーカラーで彩られた「お客さまへ」の文字。横に添えられた薔薇のイラストカット。そして過剰なまでに丁寧な扱いの「おトイレ」に「おタバコ」。二行目と三行目の頭の「お」の上にはわざわざ点まで打ってある。
言ってはなんだが、ここはゲームセンターのトイレであり、なんとかヒルズとかが付く場所でもなければセレブもこない。
そんなに「お」はいらないし、虹色加工もいらない。お客様が出すものは虹が掛かっているかもしれないが。
今回のトイレの貼り紙は個室からスタートさせてもらおう。なぜならオチがドアの貼り紙に貼られているからだ。
では個室を出て個室の外側の壁には、
「いつもきれいに
ご利用いただき
誠にありがとう
ございます。
なお、防犯上当店のスタッフも利用
いたします。ご了承下さいませ。 」
トイレの貼り紙の定型文の他に、
「またのご利用お待ちしております。」
とキラキラ輝く便器を囲むように、トイレでまた会える日を楽しみにしている旨を伝えられる。
よく考えれば何かしらのお店に行って、帰り際に背中から「またのご来店お待ちしております!」なんてのはよくある挨拶みたいなものだが、「ご来店」ではなく、「ご利用」と来ると随分と限られてしまう。
利用と来ると自動販売機なり乗り物なり無機質な機械が当てはまるのだが、何か他に思い当たるかな・・・・・・・・・
「消費者金融の自動契約機」という言葉が浮かんだが口にしないでおこう。
そっと花粉を鼻で吸い込むが如し、そっと胸に秘めておこう。もう既に書いてしまったが。
まあ本心では待ってなんかいない謝礼の言葉は置いておいて、消費者金融の機械はそれでの取引自体が目的とされるが、トイレの場合はその利用と共に店にお金を置いてくれることを望んでいる。誰もトイレの利用だけを切実と心待ちしていないのが現実。有料トイレなら上記のフレーズも違和感なく通用するかもしれない。
私のようにゲームセンターの中でゲームもせずに、トイレの貼り紙目的で来店する輩は、「もうご利用はお待ちしておりません、いや、本気と書いてマジででございます」と言われてしまうかもしれない。
今更振り返るほどのものでもないが、トイレはイヤミなフレーズの貼り紙が多いところなのだ。
さて、問題(?)はこのトイレ空間とゲーセン内とをつなぐドアにあった。
用も済んでスッキリして、さあゲームの続きでもするかと意気込んでトイレを出ようとする輩にここで急ブレーキをかけるべく存在する一枚。
「 ご注意下さい。
急にドアが開閉する事が
ございます。
お気を付け下さい。 」
<*一部モザイクをかけてますが真相はこの下で。>
確かにここのトイレの入り口のドアは、外から入ってくる側は押して、出る側はドアを手前に引いて出る形を取っている。
トイレの入り口がある通路はとても狭い。女子トイレも通路を挟んで隣接しているために、そんなところでもし出入りのために通路側にドアを引く仕様になっていては、あっという間に交通渋滞の出来上がりだ。通路側からトイレ内へと押し開けるようになっているのが普通だ。トイレ側としては手前へと、手前へとだ。
トイレの個室だってそうだ。
何も間違ったことは一言も言っていない。
トイレから出ようとしたとき、これからトイレに入ろうとした人のドアのオープン具合によっては危険がないとも言い切れない。
こちらは既に用が済んで頭の中はゲームでいっぱいのところを、次なる方は頭の中は排出で頭がいっぱいである。人によってはかなり切羽詰まっておられる方もいるだろう。一分一秒を争うのだ。そりゃあ思いっきりドアを押し開けて入ってくるときもあるだろう。
気の抜けた余裕しゃくしゃくで状態にて、タイムリミットが迫っている側の「焦り尿意」の威力でドア明けられた日は、同じ打撃にしてもその傷みの飛距離は計り知れない。
にしてもである。
なのに、、、
その下に、、、
「あぶない。
ちがでるよ。 ばたん!
きゃー。 」
この一切の感情を排除した寸劇はなんだろう。
急激なドアの開閉でどういった惨劇が生まれるかを、わざわざイラストにて説明してくれるのは非常にありがたい。
しかし臨場感・緊迫感はどこ吹く風、そこに書かれているフレーズすら死人が書いたかのよう。
「あぶない。ちがでるよ。」とのこのフレーズは幼稚園生か、はたまた電子レンジで一度ほど頭を温めてしまった人に向けられたものだろうか?チンしていいものじゃないんだと気付いたときには既に遅し、内側から湯気が立つほどほかほかになってしまっている。
確かにふいにどこかを打ってしまえばそれなりに怪我を伴うだろうが、いきなり「ちがでるよ。」はなかろう。「ちがでるよ。」は。
またその下の悲鳴といい、生まれてきてごめんなさいレベルのそぐわないぶり。
今までの全ての丁寧なフレーズが振りだったかのように、トイレを出ようとする者にトドメの一発。
正に「きゃー。」である。別の意味で。
ドアの開閉時には気を付けないと、「ちがでるよ。」。
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最近の更新(適当に
・天が呼ぶ 地が呼ぶ お客様が呼ぶ!消費者言いがかり連絡会 (更新済み)
「厠イヤミ百景の一景」
都内、某ゲームセンターにて
http://www.leolio.com/index/KAWAYA/KAWAYA_menu.html