万能の黄色いテープ | 厠(かわや)イヤミ百景

万能の黄色いテープ


今回の厠の場所もちょっと特殊な場所です。

大正末期に建てられ、一昔の実業家が所有していたが今は一般解放され、建造物としての価値もさることながら茶室などの利用、そして優雅な日本庭園を供えている観光地としても名高い場所です。いつもより敷居がちょっと高めとなっている。




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このトイレを表す木製の看板だけでもどういった場所か想像に容易いと思う。「WC」とアルファベットが記載されているのが、なんだか違和感を感じる。



ではそこのトイレを拝見させてもらう。

真正面からこの建物に入ると入館料を払わなければならないのだが、館内のトイレのみの利用も優しいかな、ちゃんと裏口の通路から入館出来るようになっている。そこの裏口については後ほど。


そこの凛とした静かなトイレ内の個室に入れば、ここの建物とそぐ合う和式便器がお出迎え。そうだよね、和式便器がとても似合っている。そして和式便器の先の壁に目をやれば、このような文章の貼り紙が、






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「トイレを

きれいに使用しましょう

(黄色のラインまでお進み下さい)」


最初の一言はよくあるものだ。しかしその後のかっこ・かっこ閉じの間に挟まれている一文はなんだろう?


「白線の内側までお下がり下さい」と来れば、もうすぐ普通だか準急だかの電車が来るんだろうと思うところだが、「黄色のラインまでお進み下さい」とは?






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こういうことだ。



「お客さんらなんだかんだ言ってこぼすから、もう。

突き降ろした丸いお尻が便器の直径を超えて、便器の外枠をまたいで、もしくは完璧に便器外にDB(大便)しちゃうから、ほら、もう指示してあげるから、どこらで足をホールドオンして腰を降ろしたら具合が好都合か、ほら、指示したげるからここまで進みなさいよ。

この線を越えるでもなく、この線よりも後ろに足をホールドオンしたら許しませんよ。ともかく指示してあげますら、ゆっくり用を足して下さいね。汚さないでね。便器の外に糞しないでね。 」



という黄色のライン。

例の「幸福の黄色いハンカチ」とは全然違う。DB(大便)のためのDB(大便)による足位置の指示ですから。



一種の目に見える規律こと、広い場所で迷いがちな私たちを整理するために存在するライン。

舞台・テレビなどCASTの立ち位置を示すために床にあったり、駅にて猛スピードで入ってくる電車に力自慢を挑む奴を近づかせないためにあったり、もっと身近なもので言えば道路にはラインだらけだ。線がなければ「なんとなく左車線」で車を走らせ、「なんとなく停車線」で停まり、歩行者は「なんとななく横断歩道」を渡ることとなる。狭い県道などたった一本のラインで「ここからこっちは歩道」と、いかに線一本が強い力を持っているか知らしめされる。

駐車場もラインがなければ真ん中に停める奴もいるかもしれない。


私たちが普段生活している地面は建物や柵がなければ、海上にただ浮かぶ一艘の小船にいるのと同じ。そこへ灯台の灯りの如し、道しるべとなる秩序と整理を示すのがたくさんのライン。もっと大きなことを言えば国境だってある。


・・・まあそれは、ただっ広い場所でのことだ。




しかしここは個室。トイレの個室。起きて半畳、寝て一畳、和式便器にまたがるのもこれまた半畳。寝っころがるなんて到底不可能な、そんなオーガナイズされるほどの広さなどどこにもない個室。

排水の際の水と共に我が身を流すことが可能であれば広大な海も待っていてくれようが、そんなの到底無理。行けてもまず下水処理場でとっ捕まること請け合い。正に処理されるだろう。

ラインのあるところ規律あり、こんな小さな個室にもラインが必要なほどここのトイレも汚されているのだろう。



「♪綺麗な指して●んだね 知らなかったよ♪」by"J歩き方" に該当するような淑女の方々には分かりかねると思うが、和式便器に座った際にあまりに前に座ってしまうと、「TOTO」とかが書かれた便器の淵と、自分のナニことJrとが「初めまして!よろしくね!前の学校では吹奏楽部でした!」とコンタクトを取ってしまうことがあるので、あまり前方に座るのは危険だ。かといってあまり後方にかがんでしまうと、これまた先ほどから言っている「糞の場外ホームラン!」となってしまう。


そこで貼られたこの黄色のライン。きっとこのラインを貼られたここのトイレを管理しておられる方が、「もうOUT OF THE 便器の所業は許さず!」と一大決心をして、テープ片手に和式便器に立ったり座ったりと何度か試行錯誤の末に、「この位置がジャストポジション!!」と平均的な男性の尻が便器からはみ出さず、尚且つ前方での便器とナニとのコンタクトの心配もない位置を見付けてくれたのだろう。それがここ。




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足を置いてみれば、このような感じとなる。

なにか「よーい・・・」、その後に「ドン!」と言われたら前へ駆け出したい気分になる。しかし既に写真に写っているように目の前の壁まで50cmも隙間はない、駆け出したが頭を打って意識の最後だろう。

ちなみにここのトイレは土足禁止なので素敵な便所スリッパを履いている。



いろいろと選択幅が多くて迷いがちな現代人、ちょっと道しるべを示してもらえると踏み出せなかった一歩を踏み出せたり、道を踏み外すところで留まることも出来る。

そう考えると、黄色いハンカチではないが、これも幸せの黄色いラインと言えなくないかもしれない。


ちなみに幸福の黄色いハンカチは、2009年にハリウッドにて「The Yellow handkerchief」という直球タイトルでリメイクされる。なぜ、今?30年前の映画だぞ。本当にネタがなくなって来ているようだ。





振り返れば後ろの壁には、




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「全館 禁煙

ご協力をお願い致します。

              ●●亭 」


「全館」というところがそこらの建物と違うな。ここに貼られているということはもちろんトイレも含まれている。







そして小便器の方に本当に用を足しに向かえば、足元に、





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つい先ほどか、どこか見覚えのある黄色のテープのラインがここにも・・・。

そして小便器の壁の上に目をやれば・・・。







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出た!

ここにも出た!


小窓から斜光が漏れる小便器の壁にも黄色のライン宣言のお出まし。


よくある「一歩前へ」とかそういう漠然としたことではなく、ここからこの位置で放尿して下さいと指示が出ている。

尿も足もこの線から踏み出さないで下さいねということだ。



線に沿って足をホールドしてみる。




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近い!
コートの裾が小便器と触れてしまうほど足が前方設定だ。


そこまで便器の外にこぼさせたくなかったのか?これはちょっと近過ぎるぞ。前髪を短く切られ過ぎた人が一生懸命に前髪を引っ張るかの如し、背を伸ばして後ろに仰け反り気味に立たなくてはコートが便器とコンタクトを取ってしまうどころか、これで尿の放出を解放してしまうと、便器から跳ね返った尿がコートに「おかえりなさいませ、だんな様」といったことになってしまう。

小便器の前に立つと言うよりも、小便器を足で挟むといった立ち位置だ。


管理者の人が実際に立って試されたか疑いたくなるほどの、実にギリギリの設定となっている。



「♪こんなに素敵なレディが俺 待って●くれたのに♪」by"J歩き方" にこれまた該当する淑女の方々には天界の話だと思うが、小便器と尿の放出との間合いの取り方は実に微妙なものとなっている。


あまり近づき過ぎると服に跳ね返りが来る。かといって遠のき過ぎると左右に立つ他に用を足している方々から、己のJrが「見ちゃいやん!」と露呈してしまう。また醤油刺しから醤油を使った後の如し、Jrという名の注ぎ口から尿を垂れこぼす率1000%。


そこでここを管理しておられる方は確実な方を優先させた方だ。確実にこぼさせない方を。

ちょっとこの黄色のラインはギリギリ過ぎて苦しいです。



ラインを貼られた方には悪いが、ここは黄色のラインからちょっと足を引いて用を済まさせてもらった。




そして手を洗い、洗面台の横の機械に目をやれば、、、







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「ご使用できません」




あっ、そうですか、すいません、失礼しました。

大丈夫です、私ハンカチ持っているんで、いや、本当すみませんでした。





ところでこのブログではトイレにある印刷物を取り上げている。

ここのトイレまで入ってきた裏口付近にもあったのだが、あえてそれを最後に取っておいた。

一見するとなんでもない。実になんでもない。パッと見では分からないかもしれない。

でも私ぁ気付いただよ。



裏口の様子を見てほしい。





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冒頭にも書いたが横の正面から入ると入館料が必要なのだが、トイレのみの利用ならばここからどうぞと心優しい配慮で裏口こと別の入り口がある。






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「土足厳禁」


先ほど私が便所スリッパを履いていた通り、靴はここで抜いで履き換えるようになっている。別にこの文字には全く問題はない。




それはこっちだ。





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「厠」


ここのブログのタイトルにもある「厠」の文字。

でもなんかおかしいぞ。





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「厠」の文字の上にも黄色のテープが!!




つまりこういうことだろう。






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・・・書いてしまったようだ。



いらぬ一筆を書いてしまったようだ。



木製の土台に墨で書いてしまった新漢字の「厠らしき字、厠だったはずの字」は、鉛筆でノートに字を間違えたように簡単に消しゴムのようなものでは消せない。木に染み込んでしまった墨は掃除機で吸おうが、濡れたティッシュで擦ろうが取り返しがつかない。まだ白いシャツにつけた跳ねたカレーうどんの汁、同じくナポリタンぐらいなら漂白剤も可能だが、木だものねえ。


これも演出と力強く木の板に力強く書いたら、ここの皆さんが、「あれ?なんかおかしくない?"かわや"ってこういう字だったっけ?何か多くない?横棒かな?あそこ入るの”り”じゃなくて、”い”じゃない?あれ~?」と気付いたが遅し。

「結構立派な板に書いちゃったぞ~、どうする?、やっぱ分かる人には分かるよね。突起物が飛び出てるものね。」、そして苦肉の策がここでも出ました黄色のテープ。隠してしまえと。



どんだけ万能なんだ、ここでの黄色のテープ。




踏み超えても踏み届かなくても、そして飛び出した場合にも使える黄色いテープ。

ご家庭に一本は欲しい逸品。


どうやら「幸福の黄色いハンカチ」ではなくて、「万能の黄色いテープ」だったようだ。




なんでもなかったことにしてくれそうです。







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秘伝「うぇぶたま」の書

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