なんかいる!
トイレの洗面台の鏡と鏡の間にスペースを張り合うように何かが貼られている。
押入れ収納こと空間の有効活用にも匹敵する貼られ方をした貼り紙とは?
「土佐名物
野根まんじゅう
小500円
中750円
大1000円
*すべて税込 」
えっ?ピーナッツ?川に流されるピーナッツ?ナッツピンチ?
いやいやピーナッツではないらしい。こういう形をしたまんじゅうのようだ。
詳しくは「野根まんじゅう」で検索して頂くとして、小学校の教室の後ろの壁にクラスのみんなが描いた遠足の記憶の如し、どうみても素人手描きの野根まんじゅうのアピールポスターがトイレに貼られていた。
先に言っておくが今回の貼り紙は土佐(高知県)だ。
ひょっこりひょうたん島のような形状をしているであろうということは容易に想像出来るが、こっ・・これは、やはり川に流しているのか?
岐阜県のとある高校の卒業式にてセーラー服のスカーフを一本につなぎ合わせ川に流す行事、「白線流し」のように野根まんじゅうを流す風習でもあるのか。一見すると、二個のまんじゅう同士が連結しているようにも見えなくもない。
もしくは鮎を放流するが如し、水をたんまり吸って(ふやけて)大きく成長でもするのか?
「大きくなって(おいしく)帰っておいで!さよならなんかは言わせない!」
まあどちらにせよ、早速岩にぶつかってつまづいているように見える。
出鼻をくじかれたな。
鏡を挟んで隣には、
「ソフトクリーム
バニラ ミックス
鳴門金時味
あります。
260円
フライド
ポテト
160円 」
ええじゃないか♪ええじゃないか♪自分のところで売っている商品に愛情たんまり、ええじゃないか♪
ソフトクリームの色をちょっと茶色にしたらそこらの個室に今出来たてがありそうでも、ええじゃないか♪
ポテトだって小便用のところにポロポロリと並んでそうだけど、ええじゃないか♪
とにかくトイレなのに食べ物の貼り紙貼ったって、ええじゃないか♪
もうちょっと現場の説明が必要と思うので追記させて頂ければ、ここは土佐県内の高速道路のサービスエリアのトイレなのだ。
先ほどの野根まんじゅうもSAで売っているお土産の一つで、このソクソ・・ソフトクリームも安いスーパーの端っこのイートインコーナーにありそうな軽飲食コーナーで売られているものだ。
つまり流れ的には、高速道路を利用する人っていうのは、まずとにかく車を降りてからトイレに向かう人が多数だと思う。
漏れる漏れるとトイレに向かって用を足した後に開放感と共に手洗い場に向かえば、「アイスあるよ、ポテトあるよ、ええじゃないか!」とこの貼り紙が出迎えてくれることになっている。
そうでなくても、高速道路のSAで降りれば、トイレに行ってなんとなく土産売り場をぶらつくか軽食を取るかになっているので、その流れに畳み掛けるかのようにこの貼り紙たちがいるのだ。二つの意味で上手いこと(美味いこと)出来ているのだ。
ところで鳴門金時って徳島県じゃないのか?
「金時すぃーとポテト
6個入り525円(税込) 」
お墓?黒いお墓?ほかほかの黒いお墓に芋がお供えされているの?
いや、これが「金時すぃーとポテト」というブツらしい。
地方に行けばそこの場所の名産物というものがある。さらに観光客に向けてその名産品をさらに食べやすくなり、お手軽感なり、土産向けにとアレンジを加えたもの達が並んでいたりする。
ビスケットになっていたり、クッキーになっていたり、ケーキになっていたり、サブレになっていたり、おまんじゅうになっていたり、キャンディーになっていたり、グミになっていたりと、キーホルダーになっていたり、アロマオイルになっていたり、クッションになっていたり、キャラクター物にしてみたり、なんならCDにしてみたりと、食べ物の範囲を超え、考えられるあらゆる展開を形にして土産として売っている。
その名産の魅力を、メロンなりスイカを皮がぺロペロに透けて見えてしまうくらいまで食べ尽くすかのように、「もう元の原形ないじゃん!」と引き出し過ぎたものが多い中、出来るだけその名産の素の魅力で勝負した一品のようだ。
金時芋の美味さをそのまま活かすべく、スィートポテト展開。スィートのところを「すぃーと」としたのは他の商品との差別化と、手が出やすい愛着性を持たすためか。しかしトイレでは馴染みにくいのは確か。
洗面台の鏡の間だけではなく、手描きのお土産紹介はトイレ内の他の壁にも貼られており、
「四国銘菓
清流吉野川旅情
・鳴門金時 一口カステラ×2コ
・すだちシフォン×2コ
・ゆずシフォン×2コ
「計6コセット」
定価525円[税込み] 」
お菓子の容器のカゴの目までしっかり描かれた清流吉野川旅情。
ピンク色の画用紙が一層目をひく。
さらにお菓子たちが、
「鳴門金時
一口カステラ」
「すだち
シフォン」
「ゆず
シフォン」
とフキダシで自己紹介をしている細かさ。左の輩はゆで卵が入った肉コロッケことスコッチエッグのようだが、自分で「ゆずシフォン」と名乗っているからにはゆずシフォンなのだフォン。右二つも果物の柿なのでは?という疑問も払拭するかのように自己紹介フォン。
私が名産品を紹介する義理はないのだが、SAに限らず土佐県に立ち寄った際にはお土産にどうぞ。
決して野根まんじゅうを川に放流したりはしない方がいい。10000%帰ってこないから。
ここで終わりかと思いきや、トイレの出口こと入り口にこんなものが、
「1月4日(木)
このお手洗いは9時00分に
清掃を行いました。
皆様のお手洗いです。
マナーアップにご協力下さい。
7:00 15:00
11:00 17:30
13:00
清掃者 ●● 」
お土産アピールでトイレ内は埋め尽くされていたが、やっとトイレらしい貼り紙を見付ける。プラスチック製で印刷されたもので、日付と時間と清掃者のとこだけ水性マジックで書き変えたり消したり出来るようになっている。ご家庭の冷蔵庫のドアに貼られている伝言板みたいなものだ。
私がこのトイレに踏み入れたのは午前中の10時過ぎで、ボードによると一番最近に掃除したのは9時と、いつ清掃したのか分かる仕組みになっている。夕方はちょっとズれるが、どうやら二時間おきに清掃をしてくれているらしい。清掃する度に何時に清掃したのか、「ちゃんとこの時間に掃除してますよ」と書き変えて知らせてくれるという配慮の細かさ。
ボードの下部には小さく、
「お手洗い・エリアの清掃はお客様にご利用いただいたSA・PAのレストラン・ハイウェイショップ等のテナント料収入で実施しております。」
先ほどまで紹介したお土産の貼り紙がなぜあんなにも貼られていたのか、リンクしてしまうような内容だった。
トイレの清掃も巡回した流れの一環であり、SB(小便)なりDB(大便)なりを落とすよりお金を落とせということだ。
ところで、もう一度見て欲しい。
清掃時間の表記の横に何かしらのスペースがある。そしてよく見れば白いボードの地と同じく白いテープにて何かが隠されているみたいだ。
もうちょっとそこの部分だけコントラストを強くしてみた・・・。
なんかいる!
なんかいる!
なんかいる!
見ちゃダメだったか!?何かしらの黒歴史だったのか、掃除のヒーローのようなものが・・・。
わざわざ白テープで隠蔽してあるからには、それなりの触れてはならぬ重い重い理由があるのだろう。誰だって触れてほしくない過去がある、このキャラ自体もなかったことにしたいようだ。
これだけは「ええじゃないか!」で済まされそうもない。
- 角川エンタテインメント
- THE JAPANESE TRADITION~日本の形~
「厠イヤミ百景の一景」